NongLuang村

JCFCが初めて組合を作った村のひとつ。元国営農場だった場所。海抜1300mで、ティピカ栽培には最適な場所。2010年、ATJが農園の中に果肉除去施設を設置。

ブンリットさん/優しいおじいちゃんの過去

 

私が出会ったのはノンルアン村の長老であるブンリットさん(63歳)。

 

彼は長老という立場であるが、暮らしは質素。家電もテレビ、ステレオ以外はほとんど見られなかった。長老という言葉を聞いて、私は彼が威圧感のある人かと思っていたがそのイメージはくつがえされた。彼は2人の小さなお孫さんに囲まれ、優しいまなざしを向け微笑んでいるおじいちゃんであった。

 

そんな彼から

「昔はルールに従わなければならず、コーヒー栽培も自由に行うことができなかった」

 

という重い言葉を聞いた時は、驚きでもありショックも受けた。優しい彼にはそのような暗い言葉は、あまりにも合わなかったからである。

 

これは彼が一番訴えたかったことであった印象を受けた。ラオスが経済の自由化を進める以前は、政府に監視され、食事も満足に与えられることはなかったそうだ。

 

苦しい時代の話しをしていた時の彼の表情は堅く、以前の苦労を表していたのかのように思えた。私は触れてはいけないことを聞いてしまったと感じた。

 

この時のブンリットさんは私達に何を求めていたのだろうか。私は、彼は統制が厳しい時代では友人や隣人と自分の意見を交えた会話ができなかったのだろうと思った。そう考えると彼は、私達に自分の過去を話すことで、昔の苦労を私達に受け止めてほしかったのかもしれない。

 

私は彼の気持ちを受け止めることができたのだろうか。正直、彼の気持ちすべて共感をすることはできなかった。彼の言葉は私に今まで意識をしていなかった事について投げかけた。

 

しかし、お孫さんを膝にのせてかわいがる彼の表情は、その問いかけを忘れさせるくらい優しく明るかった。私は今までに「暗い過去」を背負った人の本音を聞いたことがなかった。なぜ彼がこれほどまで、優しい表情をしているのだろうか。

彼のまなざしは私の印象に深くのこるものであった。

 

(岩渕)


カムチアさん/誠実なおじいさん

迷彩服を着たカムチアさんが私たちを小さな家に通してくれた。

 

その日、私たちは高床式のある家で昼ごはんをいただいたのだが、カムチアさんの家は土足のままで中には大きめのテーブルと1つのベッドしかなかった。

貧しい生活なのかと思いきや、家具が全くなかったので逆にもう1つ家があるのだと思われる。家が2つあるということに驚いたが、ラオスでは珍しくないらしい。

 

カムチアさん、妻、息子、娘夫婦、孫2人、と家族総出で私たちを出迎えてくれた。

緊張しているようだったのでお菓子を出したが、私たちが食べてからでないと手を出さず、遠慮しているようだった。

 

 カムチアさんは終始真面目な顔で質問に答えてくれた。

フェアトレードの生産者団体であるJCFCに対しての要求を聞いてみた。

要求の1つ目は「できれば豆の価格をもっと高く買ってほしい」ということ。

 2つ目は「技術指導をしてほしい」とのことだった。1回ではなかなか技術を覚えられないので、毎年来るなどしてくれ れば技術向上につながると考えているようだった。

 

「豆を売りに行くのは大変であるので買いに来てくれることは助かっている」と良い点も聞けた。  道路はアスファルトで整備されてはいないので雨が降ればぬかるむ。収穫物を販売すること自体、大変な労働であるのだ。

 そんな中、JCFCが村まで来て買にきてくれることは大きな負担が減るのだろう。

 これからも品質を向上させ、JCFCに対してもっと豆の価格を高く売りたいという気持ちがあるのだと感じられた。

 

 

 終始真面目な顔のカムチアさんと対照的に娘のティンワンさんは笑顔で子供たちをあやしながらインタビューの場にいてくれた。

 

「コーヒーは誰にいくらで販売しているのか」この質問の際には今まで口を開かなかった彼女がしっかりとした口調で教えてくれた。この家では彼女が売り先と販売価格を決めていた。

 

役割分担がはっきりとわかれており、それぞれが責任をもって担当しているとわかった。

 

真面目で私たちの質問にも最大限答えようとしてくれた一家だった。

 

これからも家族でコーヒー栽培を堅実に行っていくのだろうと感じた。


ウーンさん/美味しいコーヒーはウーンさんからの愛

「フェアトレードラベルは、世界の市場でラオスコーヒーの品質が認められることであり、長い目で見れば新たな顧客を得られる可能性があるので取得した方が良い」

ウーンさんは真っ直ぐな瞳でこう語った。

 

そんな言葉がラオスのコーヒー生産者から出てくるとは正直思っていなかった。実際、「フェアトレード」という概念すら知っている生産者は少ないと聞いていたからだ。

 

ウーンさんは8人家族のお父さんで、今年46歳。私たちはウーンさんが自家焙煎(!)したという地産地消コーヒーを飲みながら、ウーンさんは日本からのお土産、マスコバド糖のかりんとうを食べながら、奥さんや娘さんも混じった和やかな雰囲気で話してくれた。

 

ウーンさんはノンルワン村におけるJCFCという生産者組合の責任者。それだけに組合に対する意識は人一倍高い。「組合のルールに則って取引をすることが好きだ。」と言い切っちゃうくらい。日本人でも、ルールに乗っ取るのが好きって人はほとんどいないんじゃないか。そんなウーンさんは、ちゃんとした取引契約を結ばない仲買人とはまったく取引をしていないそうだ。

 

コーヒーの品質向上に対してもすごく熱心だ。組合は、良い価格で取引してくれることはもちろん、品質をあげる技術を教えてくれるところも良い、と言っていた。さらに、一度に大量のコーヒーの実を洗えるような大きいバケツが欲しいとも言っていた。後でありさんに言ったら、自分でそれくらい買えるでしょ、とのことだった。がんばれ、ウーンさん!

 

生産者を目の前にして飲むコーヒーは格別で、感謝の意が素直に出てきた。覚えたてのラオス語で「セーブ(美味しい)」って言った時のウーンさんの嬉しそうな顔が忘れられない。国を隔てた生産者と消費者がつながった瞬間だった。この感動をもっと多くの人に味わってもらいたいです。

 

(大沼)