Oxfamが設立した組合「Thevada Cafe生産組合」がある少数民族ラベンが中心の村。比較的早い段階から高品質コーヒーを生産しているため、組合のコーヒー生産への意識は高い。JCFCとの比較のために訪問した。
Katuat村では副組合長であるソンブンさんに話を伺った。家の中に案内してもらうと、私たちの後から数人のおじさんたちが入ってきた。家族かと思いきや、彼らは同じ組合のメンバーであった。
家の人以外が参加するのは初めてだったので、どのようにインタビューが進むのだろうかと思ったが、そのままソンブンさん、組合のメンバーと私たちで円になって座り、インタビューは始まった。
私たちからの質問にはソンブンさんだけではなく、組合メンバーも加わって答えてくれた。病気がちである奥さんにかかった医療費など、ソンブンさんの記憶が曖昧だったりするとメンバーが助け舟を出す。
でも、お互いをよく知る彼らだが、ソンブンさんにとって、ちょっぴり少なめなアヒルの数だけは「言うほどの数がいないから」と若干公表しにくそうな場面もあった。
しかし、ソンブンさんも組合員同士はとても仲が良いと言うだけあって、皆でああだった、こうだったと話し合う様子からは、それぞれの家計状況や生活を知るほど親しい付き合いをしているということが見て取ることが出来た。
普段の生活だけではなく、コーヒー栽培をするうえで最も大変だと言っていた農園の雑草管理も組合と協力して行っている。手伝いに行ったり来てもらったりと、互いに助け合っているようだ。
これから自分の作るコーヒーには量よりも質の良いものを求めたいと、ソンブンさんは言う。消費者を惹きつけたい、そしてより良い値段で買い取ってもらいたいと、コーヒー栽培に対する高い意識があることを話してくれた。
フェアトレードについてどう考えているかを尋ねると、フェアトレードといものについてあまりよく分かっていない様子ではあったが、彼にとっては「お互いを信頼し合うこと」だという。
村の住民同士にしても、組合にしても、豆の売り先にしても、日々助け合い、お互いを見てきたから生まれた信頼関係があった。
だからフェアトレードなんて言葉や理念なんか分からなくても、その奥にある「信頼」のほうがソンブンさんにはより身近で通じるものがあったのではないかと思う。
また、組合の一人から「日本に帰ったらこの村のことを広めて欲しい」と頼まれた。この人が信頼から私たちに思いを託してくれたのかどうかは分からないが、その関係に繋がるよう活動していきたい。
(杉原)
家族構成:
スーさん(男性30歳)中学校卒業
ジャントンさん(女性25歳)小学校2年生まで
トゥオカちゃん(女性7歳)現在小学校1年生
ノイちゃん(女性1歳6か月)
ブントゥンさん(スーさんのお父さん)
ピンさん(スーさんのお母さん)
家畜:なし
農地:1ha
所有物:バイク、テレビ、トクトク、携帯電話1台ずつ 冷蔵庫、車は持っていない
借金:なし、いままでしたことがない
将来のこと:
お金があったら車がほしい(農地が5km離れており、移動が大変だから)
子供には将来公務員になってほしい
(今井)
今年40歳になるKatuat村のヴンウーアさんはコーヒー農園を営み、妻と3人の子供たちと暮らしている。私たちが家を訪ねると少し緊張した面持ちで迎えた。
長女は中学生のラッサミーちゃん。長男は小学生のビリー君。次男はまだ5歳のヴァンゲンくん。5歳年下の妻タノムジットさんがマラリアにかかってしまったことにも取り乱さずに話してくれた。
農地は7ha持っていて、去年収穫したコーヒーは日本円にして約33万円分。コーヒーだけではなくキャベツとレタスも売るために栽培しているが、今年は価格が暴落したため、赤字が出てしまったそうだ。しかし、コーヒーの収入があるため、なんとか家族を養うことができている。
私たち日本からおみやげののりせんべいを持ってきていた。ヴンウーアさんは少し不思議そうに見たあと、なんと、巻いてあるのりをはがして食べていた(笑)
内陸国のラオスには海藻を食べる習慣がない。でも「セーム」(ラオ語で「おいしい」という意味)と言って喜んでくれた。
ヴンウーアさんも私たちにラオラオをついでくれた。ラオラオはラオスのお酒で、アルコール度数が45度もある。ラオスでは来客があると手厚く歓迎する習慣があり、それに従って突然現れた日本人にお酒を用意してくれたのだった。
ラオラオを飲みながら私が「立派なお家ですね!」と言うと、嬉しそうに、「5年間かけてつくって、今年完成したんだよ」と話してくれた。
自分で作業して費用を普通の半額程度に抑えられたそうだ。このとき今日一番の笑顔を見ることができた。マイホームのうれしさは日本人のお父さんと同じなのだろう。
談笑していると娘のラッサミーちゃんが寄ってきた。とても明るくて利発そうな女の子だ。将来の夢を聞いてみると、英語の先生、と答えてくれた。お父さんも、子供たちには大学まで行ってほしいと言いながらラッサミーちゃんを笑顔で見守っていた。
息子たちにはコーヒー栽培を続けてほしいそうで、自分の仕事にも静かな誇りを持っているようだった。未来ある子供たちのためにまじめにがんばるヴンウーアお父さん、かっこいい!
(茂木)