JCFC傘下の村。比較的新しく組合に加入した村であるため、まだ組合の意識は低い。ニュージーランドの援助により、加工施設が設置された。
セータプン村のパンさんは、一目見たときから、一風変わったオーラを発していた。
眉をひそめ、厳しい表情を崩さず、目はぎらぎらとしていた。のんきで温和さが感じられるラオス人の農家の人たちとはちょっと違ったその目に、私はひかれた。そしてインタビューをしていくにつれ、私は彼の風貌のわけを知ることとなる。
コーヒーの生産量について聞いていたときであった。
「コーヒー生産のほかにも、まだやっている事業があるのだよ」と彼が言った。
今までに訪問した村の中には、そのような人がいなかったので私はがぜん興味をもった。
どのような事業を行っているか、質問すると
「全部で4つだよ。コーヒー生産に、仲買人に、金貸しに、お店経営だよ」と彼は自慢そうに言った。
よくよく聞いてみると、仲買人として彼はキャベツをタイに、タロイモとカティモールを中国に輸出しており、金貸しとしては、隣人などの農家にお金を貸すかわりに、利子としてコーヒー豆を受け取っているという。
しかもその利子のコーヒー豆が膨大であった。金額に換算するとすごい額になる。いわゆる高利貸しである。
仲買人というのもなかなか珍しいのに、さらに高利貸しである。ずいぶんビジネス好きな人だなぁと思っていると、さらに彼は言った。
「コーヒー生産についても、人を雇い入れるときは出来高制にしているよ。」
出来高制とは、自分がやった仕事の両だけお金がもらえる制度だが、この出来高制を採用していると、仕事をさぼることができなくなる。ここからも、彼の仕事に対するシビアさがうかがえる。
ラオスでは、農業に従事することが多く、まだまだ貧しい人がたくさんいる。貧しい人々は自分の畑仕事が終わると、他の人の家に出稼ぎにいく。このように、貧しい人は生活が苦しく、借金をする人もたくさんいる。雇い入れる側であり、お金を貸す側のパンさんは、ラオス人の中でかなり特殊な人であると言えよう。
しかし最後に、彼がポツリといった言葉が私の耳に残った。
「これだけたくさん家族がいるからね。俺一人で養っていくには、色々なことをしなきゃいけないのだよ。皆が幸せに暮らせるようにはね。」
この言葉に、彼が大人数の一家の大黒柱としての責任感を常にもち、自分にも他人にも厳しくしているわけが隠されているような気がした。
(伊藤)
年齢:49歳
家族:7人
農地:カティモール、ティピカ、ロブスターをそれぞれ1haずつ
JCFC(生産者組合)とAGPC(国策の組合)について:
両者も買値はほぼ同じだが、JCFCの方が村に頻繁に来るなど関係が近い。JCFCは高品質を保つため、今後も長期的に契約していきたい。
子どもにして望むこと:
上の三人の子どもは教育を受けられなかったため、コーヒー農園を継いでもらうように、作り方等を指導しつつ一緒に行っている。下の子二人には、学校に行き医者になってほしい。(←教育にも費用がかかるが、医療費も高額になるため、子どもに将来的な投資をして医者になってほしい)
・キビンさんはとても真面目そうで、穏やかな口調でインタビューに答えてくれた。農地は比較的小さめだったが、家族一丸となってコーヒー栽培をしている印象があった。また、私たちが日本でキビンさん達のコーヒーを売ることも応援してくれており、更に頑張ろうと思った。(村田)
年齢:40歳
家族構成:
妻(49)、娘(25)、息子(23、高校生)(15、中学生)孫息子(2)
コーヒー農園:約2ha
コーヒー栽培において大変なこと:
コーヒーの病気や、根っこを食べてしまうもぐらのような動物の対処に苦労している。
しかし、農薬を使うと土地の寿命が短くなってしまうため、農薬は使用せずに栽培している。
自家製のコーヒーを飲むか:
以前はたまに飲んでいた。しかし最近はDao Heuang社(ラオスの大手コーヒーメーカー)のコーヒーの方が簡単で飲みやすい。
今の夢:
夫…よりたくさんのコーヒーを栽培して、大きな車や大きな家を買うためのお金が欲しい。
妻…たくさんのコーヒーをつくることはもちろん、現在栽培しているキャベツやレタス以外の野菜も市場に売って、お金が欲しい。
息子たち…大学へ行って勉強したい。
・どの種類の豆をどれだけ育てているかをきっちり把握していなかったことに、初めは驚いた。
しかし彼らにとって重要なのは、どれだけ収穫できたかよりも、どれだけ手元にお金がわたるかなのだと感じた。
(住吉)